ロジカル思考実験

ロジカル思考実験「宇宙船の悲劇」あなたならどうする?

宇宙船の悲劇

あなたは火星で、地球に向かう定員3名の小型宇宙船に乗り込みました。
他に運転士1人と、仕事仲間が1人乗っています。
仕事仲間は宇宙酔いが酷いため、乗り込むと同時に「着いたら起こしてほしい」とあなたに頼んで、専用の睡眠薬を飲み、眠りにつきました。

宇宙船が飛び立つ直前、突然大男が乗り込んできて、運転士を宇宙船から放り出して扉を閉め、地球に向けて出発させてしまいました。
船内には大男とあなたと、眠り続けている仕事仲間しかいません。

この男は、あなたが昨日テレビで見た、逃亡中の強盗犯に間違いありません。
2人が比較的軽い怪我を負い、300万円が盗まれたと報道されていました。

この宇宙船は、乗る人の重量に応じて無駄なく燃料を入れている為、運転士よりだいぶん重い大男を乗せたまま地球に到着することは出来ません
大男はその事実を知らない様子です。

あなたは、宇宙船を操作したことはありませんが、興味があって、並みの運転士くらいの知識はあります。
それに加えて、普段から宇宙船を使うことは多く、運転士の操作を見ていましたから、あなたは、自分が無事に着陸操作を行える確率は、50%程度だろうと思っています。

もし、失敗すれば命はありません。

一方、運転士を追い出して乗り込んだ大男は、宇宙船の操作の免許を持っており、操作にも慣れている様子です。大男が着陸操作をした場合、確実に着陸できるでしょう。

あなたにできることは次の3つしかありません。
どれを選択しますか?
どの選択肢を選んでも、確実に実行できるとします。
宇宙船の外に放たれた場合、その人は死亡します。

選択肢A
隙を見て大男を持っている武器で気絶させ、宇宙船外に放つ。
⇒着陸成功の確率は50%に。

選択肢B
あなた自身が宇宙船の外に飛び出し、犠牲になる。
⇒着陸成功は確実。

選択肢C
眠っている仕事仲間を宇宙船の外に放つ。
⇒着陸成功は確実。

何を聞かれているか?を考える

たとえば次のように「要するにどういうこと?」と聞かれたと想定して、どう答えるかを考えてみてください。

重さがオーバーしてしまった宇宙船。誰かが宇宙船の外に出て犠牲にならないと、着陸できない。
自分か、眠っている仕事仲間か、勝手に乗り込んできた強盗犯(大男)か。
運転士がいない為、確実に着陸させられるのは強盗犯(大男)のみで、自分は50%。
どれをえらぶ?

自分の意見とその理由を考える

 どちらを選ぶかを決めたら、その理由を考えてください。

 このとき、脳内で会話をするように思考を展開していくと、考えをすすめやすくなります。
 なるべく論理的に脳内会話をしていきましょう。
 ⇒ロジカルに思考実験を考えるには

この思考実験のアンケート結果

 独自に取ったアンケートの結果を掲載します。自分の意見とどう違うのかと深堀りしたり、違う意見の人の思考を理解しようとしたり、考えの幅を広げるように意識しながらご覧ください。

隙を見て大男を持っている武器で気絶させ、宇宙船外に放つ

確実ではないとはいえ、強盗犯と一緒に生還するのは間違っていると思ったから。

仕事仲間を宇宙船の外に放り出しても大男が自分を見逃してくれるかどうか分からないし、大男と2人で地球へ行くのは怖い。大男を放り出して、着陸前に仕事仲間を起こして一緒に着陸をする。

天涯孤独の身ならば、もし孤独死して誰かに発見してもらうことになると、最後に迷惑をかけることになります。一方、自分を薬にしてもらうなら人の役に立つし、意味があったと思えます。

やるしかないでしょう。それに失敗したら死ぬとしても闘います。
但し、眠っている仕事仲間との関係が希薄な物だったら、己が生きる為に彼を放出する選択をする可能性があります。

強盗犯のために、自分も仕事仲間も犠牲になるのは嫌であると思い、選びました。成功確率が50%もあるので、それに賭けたい、という思いもあります。

強盗を起こした加害者であり、助かってほしいのは仲間と自分であって、宇宙船に突然乗りこんできた大男は助かる価値はないと思います。
もし自分の運転で助かる可能性は50%だとしても、自分で宇宙船を動かすことは良い経験になると思うので、私なら隙を見て大男を持っている武器で気絶させ、宇宙船外に放ちます。

いくら安全に着陸できると言っても犯罪者と一緒に助かりたくないです。自分達が生き残る確率が減っても大男を見逃したくない。

あなた自身が宇宙船の外に飛び出し、犠牲になる

自分が犠牲になることで他人のためになると考えたから。

他の人に何かをするのは私としてはできませんが、自分を犠牲にすることは、心が痛むことがないからです。

直感なので深い意味はありませんが、どうせなら自分が犠牲になる方が正しい選択だと思えたからです。

この他を説得できる自信がないので。

眠っている仕事仲間を宇宙船の外に放つ

眠っている人は一番役に立たないし、寝ている間に外に出しても気づかず苦しみが少ないため。

生き延びる確率が一番高そうだと思ったのでこちらを選びました。
もちろん、仕事仲間を犠牲にするのは罪の意識を感じると思いましたし、大男が悪いのだからこっちを犠牲にするのが普通だとは思いましたが、今回はどの選択が生存する確率が高いのか、という観点から考えてみました。仕事仲間は眠っているので罪の意識も少しは軽減されるかもしれないし、大男も地球に到着すれば罪に問えるのではないかと思ったのでこちらを選びました。

自分が確実に生き残る方法はこれしかないので眠ってる仲間には犠牲になってもらう。

確実に助かる方法はこれしかないからです。

自分が助かるためには大男か仕事仲間のどちらかしかいない。そしてその中でも自分が確実に助かるのは大男に運転させるしかないため、眠っている仕事仲間を外に放つを選択しようと考えた。

この思考実験の最終的な答えは?

 意見を読んで、どう感じたかを思考してみてください。
 人によって、ここで意見を変えるかもしれませんし、やはり最初の意見を変えないかもしれません。
 どちらが正しい意見ということもありません。大切なのは「自分の意見」を持ち、それを論理的に考えていくことです。

アンケート結果 割合と多数派

この思考実験のアンケートでは、次のような結果となりました。

選択肢A … 87%
隙を見て大男を持っている武器で気絶させ、宇宙船外に放つ。
⇒着陸成功の確率は50%に。

選択肢B … 4%
あなた自身が宇宙船の外に飛び出し、犠牲になる。
⇒着陸成功は確実。

選択肢C … 9%
眠っている仕事仲間を宇宙船の外に放つ。
⇒着陸成功は確実。

思考のヒントとこの思考実験のミニ解説

 多数派は圧倒的に「隙を見て大男を持っている武器で気絶させ、宇宙船外に放つ」でした。

 自分が助かる命が半分になっても、宇宙船の危機を招いた大男(強盗犯)に運転を任せる道は選びませんでした。一方で、自分が犠牲になるを選んだ人はわずか4%です。もし、これが「強盗犯の仕業」ではなく、宇宙船の故障(乗り合わせた3人に責任がない)であったとしたら、この確率は多少なりとも上昇するでしょう。

 複数の意見に、「強盗犯と2人になるのは危険である」という意見がありました。この思考実験の選択を、自らの危機で左右しないために、条件として「強盗犯は自分に危害を加えることはない」という条件を加える必要があったと考えられます。
 この思考実験の選択において、「自分の危機」を考えることが出来た人は、現場を頭の中で再現するように想像できた人であると言えるでしょう。

 また、選択肢や設定を変えて、アンケートを取ってみたい思考実験となりました。 

 あなたの最終的な選択はどれでしたか?