最後通牒ゲーム
あなたはある実験に参加することになり、近所の実験会場であるオフィスビルの1室にいます。
隣の部屋には、もう1人の実験参加者(Aさん)がいます。
しばらくすると、部屋に実験の担当者が入ってきてこう言いました。
「今から、あなたとAさんの2人に、あわせて10万円をさしあげます。この10万円をどう分けるか決めるのはAさんです。
もし、配分が気に入らなければ、あなたはお金の受け取りを拒否できます。
ただ、拒否した場合、あなたもAさんも互いに1円も貰えません」
担当者はAさんの配分を聞くために、Aさんの部屋に向かいました。5分後、戻ってきてこう言いました。
「Aさんは、あなたの取り分を500円、Aさんが9万9500円と提案しました」
この提案を承諾すると、あなたは500円を受け取り、Aさんが9万9500円を受け取ります。
この提案を拒否すると、あなたもAさんも1円も受け取れません。
さて、Aさんからの提案を承諾しますか? 拒否しますか?
※なお、あなたはこの実験に対して「お金を貰えるなんておかしい」などの疑問は持っていないとします。
※あなたとAさんは互いに面識がなく、名前も何も知りません。それは今後の人生においても同じです。
何を聞かれているか?を考える
たとえば次のように「要するにどういうこと?」と聞かれたと想定して答えを考えてみることで、聞かれていることを理解します。
「隔離された状態の自分とAさんがいて、10万円を2人で分けるゲームです。取り分を決めるのはAさんで、Aさんは500円があなたの分け前と言ってきました。隔離されているから話し合いはできない。選択肢は2つ。承諾なら自分は500円でAさんは99500円。拒否なら双方0円。さて、どっちを選びますか、という質問です」
自分の意見とその理由を考える
承諾するか、拒否するかを選び、その理由を考えていきます。
このとき、脳内で会話をするように思考を展開していくと、考えをすすめやすくなります。
なるべく論理的に脳内会話をしていきましょう。
⇒ロジカルに思考実験を考えるには
「最後通牒ゲーム」のアンケート結果
独自に取ったアンケートの結果を掲載します。自分の意見とどう違うのかと深堀りしたり、違う意見の人の思考を理解しようとしたり、考えの幅を広げるように意識しながらご覧ください。
承諾派の意見
拒否すれば1円ももらえないので、500円でももらえるのであればそちらを選びます。
Aさんが9万9500円貰うのには納得できないですが0円よりはいいと感じるからです。
初対面で知らない相手からの提案で選ぶほうの配分があきらかに多いのは納得がいかないけれど、1円ももらえないよりはましなので受け入れる。
相手に損した気分をもたせるのもどうかと思うため。自分の利益は致し方ない部分があります。
どうせタダで貰えるものだし、人を信用していないので、500円でも貰えれば儲けものだと思うので。人が儲かろうと関わり合いがないのでどうでもいい。
拒否すると500円ももらえなくなるので。配分は不満だが次は自分にもいい運が舞い込むと思い承諾します。
承諾するだけで多少なりともお金を手にすることが出来るなら承諾した方が良いと考えます。
そもそも、Aも私も、最後通牒ゲームに参加しなければ金銭を手にすることはありませんでした。
0円の状態から500円になるだけでも得しているので私は承諾します。
たしかに、Aが9万9500円もの金額を手にすることは理不尽ではありますが、0円になるよりは良いと思います。
昼食代が浮いて良かったと思えば十分だと思います。
拒否派の意見
相手の取り分が多すぎて、お金の配分に何ら公平性がないからです。
自分の取り分が相手に比べて、法外に少ないと感じられるので、もらわないほうが気持ち的に納得がいく。
あきらかに配分がおかしいと思うので500円だったらもらわなくてもいいかなと思いました。
半分以上で無い限り受け取りを拒否し、相手に多い配分を与えなくするため。
平等に分けようとしない相手の精神がむかつくので拒否。
500円なんて無いに等しい。
自分が500円貰ってもAさんの取り分についていやな感情が残るため、あえて500円は放棄した方が良い。
利益の最大化を狙いたいという気持ちが出ました。少額でももらえるだけもらうのならお得という気持ちも出ました。
しかし、葛藤のあと、500円なら失っても構わないと考えました。
この思考実験の最終的な答えは?
意見を読んで、どう感じたかを思考してみてください。
人によって、ここで意見を変えるかもしれませんし、やはり最初の意見を変えないかもしれません。
どちらが正しい意見ということもありません。大切なのは「自分の意見」を持ち、それを論理的に考えていくことです。
アンケート結果 割合と多数派
最後通牒ゲームのアンケートでは、次のような結果となりました。
承諾する…33%
拒否する…67%
承諾派の総括意見
納得したわけじゃないんだよね。もちろん不公平とは感じているよ。
でも、まあ、0円よりは500円のほうがいいからね。決める権利はAさんなわけだし仕方ない。
拒否派の総括意見
いーや、不公平でしょう、どう考えても。
99500円に対して500円って、当然納得できない。
500円なら0円でも大した差ではないから、拒否を選択する。これで、Aさんに欲張りなことをしないほうがいいと知ってもらいたい。
最後通牒ゲームの解説
承諾した場合は2人ともお金がもらえますが、拒否すると双方0えんです。つまり、拒否は承諾と比較すると、Aさんも自分も損をする選択肢となります。
それなのに、多数派は「拒否」です。おそらく、この文章を読んだ方のほとんどがこの結果に納得はするでしょう。自分がどちら派であっても、きっと多数派は「拒否」なのだろうと感じるかと思います。
これは、人は「平等を求める」という性質から理解することができます。人間は不公平なことに敏感に反応する生き物(そういう脳を持っている)です。
クラスや職場で、誰かがえこ贔屓されれば周囲の人は面白く感じませんし、贔屓されても周囲の感情を思うといい気分になれないものです。
おにぎりを盗んだ万引き犯がお金に困っていない人だった場合と、貧乏な人だった場合を想像してみても理解できます。貧乏な人のほうには少しくらい同情という感情が生まれたとしてもおかしくはありません。
人の目は恵まれている人にはより厳しくなるものです。
さて、最後通牒ゲームに話を戻します。実は、アンケートを取る際、もう一つの質問をしました。
「Aさんの提示額が5万円だったら?」という質問です。
ご想像の通り、ほぼ全員が「承諾」を選びました。
5万円を提示された場合の承諾の意見
ちょうど半分が罪悪感がなく、お互い納得できると思う。
等分なら妥当な条件であり何も拒否する理由もないので。拒否することででこちらがさらに分取れるとも思えないし取ろうと思わないので。
知らない人との関係性では半分づつがちょうどいいと思う。
半分半分なら恨みっこなし。
お互い同じ額なので納得して分けることができると思うから。
特に拒否する理由が見つからないと、承諾を選ぶ人がほとんどという結果になりました。
平等な金額になると、ほとんどの人は納得するのです。
つまり、承諾が拒否の分かれ目は、金額の大きさではなく平等か否かという点にあるといえます。
たとえば、全体が1000円であれば、500円でほとんどの人は承諾するでしょう。全体が1000万円なら、5万円受け取れるとしても拒否する人は多くなるはずです。
「最後通牒ゲーム」は、Aさんヘの感情が選択を決める決定打となるのです。Aさんに干渉したい、わからせたいと考えれば、拒否を選択する以外に方法はありません。承諾を選んだ人も、そのほとんどは納得したわけではありませんから、その感情がどこに向かうかによって選択が分かれると言えるでしょう。
人は平等を好むという感情を意識すると、「最後通牒ゲーム」でなくても物事を円滑に進めるために役立ちそうですね。仕事でも日常でも、相手は「不公平なこと」に気を悪くするのだと覚えておきたいものです。