AIが描いた美術品の価値
とある国で絵画の販売会が開催されました。
この販売会は、次の流れで開かれます。
1.販売を希望する絵を応募で集める。
2.絵画界の巨匠たちが絵に点数をつける。
点数が一定水準に満たない絵は返却される。
3.合計点数や絵の大きさ等を元に販売会側が売値を決める。
4.販売会開始。この時初めて作者の情報が公開される。
巨匠も作者の情報をここで知ることになる。
この販売会は巨匠たちが優秀と認めた作品以外はこの販売会では販売されないことから、富豪たちの間で人気の販売会でした。
富豪の新山は、この販売を運営する責任者の男性と知り合いで、販売会開催の前日に、現地に足を運びました。
その展示場で、新山はAIが作者である絵画が10点ほどあることに気づきます。
「たしか、数年前にAIが有名画家のような絵を描いたといってニュースになったなあ。AIも美術品を作り出す時代になったか…」
すると、販売会の責任者の男性がこんな説明をしました。
「ここ数年、AIが描いた絵が売られることも少しずつ増えてきましたが、この販売会では今年初めてなんですよ。
…そこで、ちょっと相談なのですが…。
実はですね、値付けに関して意見が割れていまして。
AIが描いた作品も、人が描いた作品と同じ値付けの方法でいいのか? という話なんですよ。
巨匠たちはAIとは知らずに、出来栄えのみで点をつけています。
その点数と、絵の大きさなど、総合的な価値を考えて値付けをするのですが…。
AIが世界で初めて絵を描いたのなら違う価値があるでしょうけれど、ここ数年、取引数は少しずつですが増えてきています。
私には、AIの絵の価値がまだつかみ切れていないんですよ。
新山さんなら、点数が共に同じ絵画だったら、AIでも人の絵でも同じ価格で買いますか? たとえば、人の絵が5000万円、AIの絵が5000万円です。
どちらも新山さんの趣味には合っていて巨匠の評価も同じです。人とAIということ以外に差はないとしてくださいね」
あなたが新山なら、どちらを選択しますか?
・AIでも人でも同じ価格で購入する。
・同じ価格では買わない
※この思考実験は、青春出版さんから出版させていただきました「思考実験が教えるあなたの脳の鍛え方 「強み」と「弱み」を知ると思考の幅は広がる」に収録されています。解説もこちらの本のほうが詳しく書いておりますのでぜひご覧ください。収録タイトルは「AI画伯」。
何を聞かれているか?を考える
たとえば次のように「要するにどういうこと?」と聞かれたと想定して、どう答えるかを考えてみてください。
▼質問への答え方の例
出来栄えも、巨匠の評価も同じ、双方好みにあう2枚の絵があります。片方はAIが描いた絵で、人間が描いた絵です。すでにAIの絵は少しずつ取引数が増えている時代です。この2枚の絵は同じ価格がいいでしょうか?
あなただったら同じ価格で買いますか?
自分の意見とその理由を考える
どちらを選ぶかを決めたら、その理由を考えてください。
このとき、脳内で会話をするように思考を展開していくと、考えをすすめやすくなります。
なるべく論理的に脳内会話をしていきましょう。
⇒ロジカルに思考実験を考えるには
この思考実験のアンケート結果
独自に取ったアンケートの結果を掲載します。自分の意見とどう違うのかと深堀りしたり、違う意見の人の思考を理解しようとしたり、考えの幅を広げるように意識しながらご覧ください。
同じ価格で購入するとする人の意見
絵そのものに価値があるなら、作者が誰であれ、関係なくその価値分の金を払えばいいと思う。
AIだと簡単に自分の書きたいように描けそうで、人が苦労して描くことと同等と思えず、その点から同じ価格ではおかしいと感じたので。
もともと、美術品は「素晴らしい」という主観以外に価値を持たない。
見て素晴らしければ、誰が作者だろうと関係ないと思う。
むしろ、できばえが同じなら才能はあるが品性下劣な人間よりもAIが描いた絵の方を買いたい。
絵の質が同じで良いと感じるのであればAIと人が描いた作品に差はないと思うから。誰が描いたかによって価値が変わるのは、絵自体の値段ではないということなので、それで価格が変わるのは納得がいかない。
人間だけが出品しているときも、何十枚もかいてもコンペでふるいにかけられている。
AIだって、もとのプログラムは人間が作っているから、人間の作品とも言えると思う。
絵画など美術品は、投資目的でなければ所有者が気にいるかどうか、支払う金額に対する価値があるかどうかの話になるので、AIが書いたものでも趣味に合っているのならば購入すると考えます。
近代で高額で取引される絵画なども、作者が生きている頃は売れなかったというような話を聞くと、その時々で価値は変わるものなので、その時に気に入ったのならば買うという判断もありと思います。
芸術としてその絵画が気に入って買うのであればAIであろうと関係ないと思う。しかし、投資として絵画を買う人は騙されたと言うでしょう。
作品の金銭的価値と、作者が誰であるかは切り離して考えても良いと考えるから。
同じ価格では購入しないという人の意見
絵そのものに価値があるなら、作者が誰であれ、関係なくその価値分の金を払えばいいと思う。
AIだと簡単に自分の書きたいように描けそうで、人が苦労して描くことと同等と思えず、その点から同じ価格ではおかしいと感じたので。
作品に込められた想いが全然違うから。
人が絵を描くときには、様々な想いが込められていて、それを伝えるために作家はいろんな苦労や工夫をしていると思う。
それを想像するのが楽しいので、人が描いた絵のほうが価格が高くなるのが妥当だと思う。
やはり人間の手で描いた作品の方が味やぬくもりがあって、その絵に人間味やユーモアなど、人にしか出せないものがにじみ出ると思うから。
人間が自分の手で絵を描いたことに価値があるので、AIにはその価値がないから。
作家の人生の中の一時点という気持ちで絵を購入します。なので、作品自体が良くても、その前後の作家の歴史を考える楽しみがないとつまらないなぁと思います。
AIが描いた作品が書いた作品はオリジナルではなさそうだから。
AIなら同じ様な絵画を大量生産出来てしまう。人が書いた絵という物は、技術的に劣っていたとしてもその作者の思いや表現方法によって、人の心に問いかける物だと思うので、そこまでAIが表現出来るとは思えないから。
この思考実験の最終的な答えは?
意見を読んで、どう感じたかを思考してみてください。
人によって、ここで意見を変えるかもしれませんし、やはり最初の意見を変えないかもしれません。
どちらが正しい意見ということもありません。大切なのは「自分の意見」を持ち、それを論理的に考えていくことです。
アンケート結果 割合と多数派
この思考実験のアンケートでは、次のような結果となりました。
AIでも人でも同じ価格で購入する…44%
同じ価格では買わない…56%
思考のヒントとこの思考実験のミニ解説
人の描いた絵と、AI画伯の描いた絵の違いを考えていくことで思考を深めていく思考実験です。
人の絵には、描いたときの感情があり、見た人にどう思ってほしいかという想像があったり、誰かに向けた絵という画家の中での設定があったりするでしょう。AIの絵の場合は、そこに人の感情は入りません。入るとすれば、そのAIを作った人の感情ということになります。
2枚の絵は、絵の評価や出来栄えは同じであり、好みの度合いも同じです。もしこれが2枚とも人の絵だったとしたらどうでしょうか。
1枚が80歳の人の絵、1枚が20歳の人の絵だったら?
1枚が女性、1枚が男性の絵だったとしたら?
1枚が有名な画家の絵、1枚が無名な画家の絵だったとしたら?
1枚が知り合いの絵、1枚は知らない人の絵だったとしたら?
1枚が好きな性格の人の絵、1枚は嫌いな性格の人の絵だったとしたら?
次に、AIだった場合と、上のいずれかの人だった場合と考えてみたとき、どう感じるでしょうか。どれにしろ「絵が同じ」なのなら変化なしとする人と、「絵が同じ」ならそれ以外の要素を加味して考えたいとする人に別れるでしょう。
あなたはどちらでしたか?
※この思考実験は、青春出版さんから出版させていただきました「思考実験が教えるあなたの脳の鍛え方 「強み」と「弱み」を知ると思考の幅は広がる」に収録されています。解説もこちらの本のほうが詳しく書いておりますのでぜひご覧ください。収録タイトルは「AI画伯」。