性格改善の薬を使うべきか
ある国では、50年前から18歳になると必ずある機械で脳のデータを取っています。これは国民の義務として定められています。
国は、そのデータから、国民をAタイプ~Qタイプの17のタイプに分けて、解析を行っています。国民の脳のタイプは遺伝的な要素もあれば、生まれてからの環境的な要素もあります。その双方が十分に備わった、18歳時点のタイプが導き出されるのです。
50年分のデータを基にした追跡調査によると、国民全体の1%にも満たないJタイプの人は、その18%が殺人や窃盗、暴力、詐欺といった何らかの事件を起こしていることが分かったのです。これは、他のタイプと比較して、異常に高い数字です。
次いで高いのはLタイプの6%です。そのほかのタイプは1%~3%ほどか、1%よりもよほど低いタイプだってあります。
とにかく、Jタイプが突出していることが分かったのです。
さて、あなたはこの国の王様です。
そして、側近の一人から、こんな提案を受けました。
「Jタイプは危険すぎます!彼らがいなくなったなら、国の犯罪数は大きく減少します!
ただ、彼らを消すわけにもいきませんからね。
そこでですね、実は先日興味深いものが開発されたという情報が入りました。
ある薬を服用すると、その人の性格を改善できるのです。
つまり、犯罪を起こさない人間に近づけるということなんですよ。
Jタイプの人間に、この薬を注射します。
本人には一定のタイプの人に無料で注射しているものと説明すればいいでしょう。
Jタイプの人は、国全体の1%にも満たないのですから、予算も何とかなりますよ。
王様、やりましょう! 犯罪を未然に防ぐのです!」
あなたは王様としてこの薬を使用するよう命令しますか?
※薬は確実に説明通りに効果が発揮されることがわかっているとします。
つまり、犯罪が減少します。
※王様や側近はJタイプではありませんので、薬は使用しません。
▼あなたの選択は?
・性格改善の薬をJタイプの人に使用する
・性格改善の薬を使用しない
何を聞かれているか?を考える
たとえば次のように「要するにどういうこと?」と聞かれたと想定して、どう答えるかを考えてみてください。
▼質問への答え方の例
データから、犯罪者となる確率が高いグループ出るJタイプ。この人たちに、犯罪を抑制できる「性格改善薬」を投与することは許されるだろうか?あなたが決定権をもった王様だったらどうする?
自分の意見とその理由を考える
どちらを選ぶかを決めたら、その理由を考えてください。
このとき、脳内で会話をするように思考を展開していくと、考えをすすめやすくなります。
なるべく論理的に脳内会話をしていきましょう。
⇒ロジカルに思考実験を考えるには
この思考実験のアンケート結果
独自に取ったアンケートの結果を掲載します。自分の意見とどう違うのかと深堀りしたり、違う意見の人の思考を理解しようとしたり、考えの幅を広げるように意識しながらご覧ください。
この思考実験は、アンケートでもかなり多くの鋭い意見が寄せられたため、現時点で本に収録することが出来ていないテーマです。
ぜひ深く考えてみて、それから下記の意見をご覧ください。
ロジカルシンキング(論理的思考)を意識して、自分の意見をまとめてみてください。
性格改善薬を使用するを選択した人の意見
少しでも犯罪未然に防げる可能性があるのなら、副作用などがないのなら使うべきだと思ったからです。
脳を調べることで、実際に、殺人、強盗、詐欺などを起こしやすい人がいるというのは、事実だと思う。プライバシーに配慮して、薬を飲んでもらうことによって、その人自身も周囲の人も幸せになれば良いと思う。
薬を注射することで、誰にも損はないと思うので、注射して犯罪を未然に防ぐ方がいいと思います。
性格と言っても、一種の病気と捉えることで治したほうが良いと思うからです。
Jタイプの人はある意味、精神的に疾患を持ちやすいタイプであるとみなせば、性格改善の薬を投薬するのも治療の一環だと考えられます。それで犯罪を起こす可能性を最小限に抑えることができるなら、本人も加害者になって苦しむことはないし、もちろん被害者を作り、被害者とその周りの人々とを苦しめる可能性もなくなり、誰にとっても良い結果となるのではないでしょうか。
アメリカでも日本でも、犯罪者の数割は軽度知的障害か発達障害だと聞いたことがある。彼らの多くは、障害や症状を改善するための薬を服用している。心理療法や育て方だけではどうにもならない場合が少なくなく、薬の服用は行うべき。
この国は国民を17タイプに分けて運営している。そのため薬を使うことは決して不自然なものではないし、この国の運営方針からしてもおかしくない。犯罪数が減るのであれば薬を使うのは仕方ないと考える。
国王の仕事は国民の安全を守ることだと思うので殺人などが減ったら国民の命も守られるのでこの注射をJタイプの人に使用したいなと思いました。
性格改善薬を使用しないを選択した人の意見
例えばJタイプがなくなったとしても、それに代わるタイプが必ず存在するようになるから。
働き蟻の割合と同じで、Jタイプを減らしたところで他のタイプの犯罪率が上がっては意味が無い。
副作用やら他の弊害やら全くデメリットの情報を出さない側近にも不信感を感じる。
他人の人格を変えてしますような方法はとるべきでない。17タイプのうち犯罪率が高いというだけで、17タイプすべての人間に犯罪を犯しかねない因子はあるわけで、本当に犯罪を犯さない人間にち近づけることが可能いならば全員に接種すべきと考える。
少ないJタイプの大半も犯罪はしない。そのために薬を使用するのはナンセンスだと思う
人間の多様性を否定することになるため使用しない。ただし、事実を正直に告白して、同意のもとであれば使用しても良い。過半数以上の場合に犯罪が見られる場合といったケースが発生した際には柔軟に対応しても良いと思う。
薬を使ってJタイプの人をなくしても結局それは一時的な問題で、Jタイプの人が生まれる度にそれを使い続けなければならないと感じる事や、色々な人がいることで感じる事や学ぶこともあるのかもしれないので。
仮に、この薬を使用したとしてもこの国の犯罪率が減るとは限らないと思われるから。
Jタイプが犯罪をしなくなったとしたら、次はLタイプの人が犯罪をする確率があがるかもしれない。
私はそういったリスクよりはJタイプの人が犯罪しないような国家作りに予算を使って欲しい。
自然に任せるべきなのかもしれないが、手段があるのなら実験の一つとして試してもよいように思う気持ちもある。しかしやはり本人の了解を得ないという点で、許されないと考える。
この思考実験の最終的な答えは?
意見を読んで、どう感じたかを思考してみてください。
人によって、ここで意見を変えるかもしれませんし、やはり最初の意見を変えないかもしれません。
どちらが正しい意見ということもありません。大切なのは「自分の意見」を持ち、それを論理的に考えていくことです。
アンケート結果 割合と多数派
この思考実験のアンケートでは、次のような結果となりました。
性格改善薬を使用する…52%
性格改善薬を使用しない…48%
結果はほぼ半々という拮抗した結果となりました。意見が分かれる思考実験だったようです。
思考のヒントとこの思考実験のミニ解説
もともと本に収録するつもりで、この思考実験のアンケートを集めたのですが、想像より様々な意見が寄せられました。収録予定の本は各思考実験に割けるページ数が少なかったため断念しまし、このブログに載せることになりました。
あなたの意見はどちらでしたか?
「性格改善の薬」をどうとるのか?が最初の思考の分かれ道になります。
「犯罪を起こさなくなるいい効果のある薬」なのか、「性格を変えてしまう人権侵害の薬」なのか。
さらに、「改善」をその人にとっての改善ととるか、国にとっての改善と取るかでも考え方は変化するでしょう。
たとえば、会社にとってと考えれば、よい性格は「素直で積極的」かもしれません。本人にとっては「優しくて豪快」かもしれません。この場合、会社にとっての改善と、本人にとっての改善は違います。
この性格改善の薬も、「誰にとっての改善」なのかは深く考えてみる必要があります。文面からは、「国にとっての改善」とみていいでしょう。
さらには、将来被害者になってしまう人から見ても「改善」とみて間違いありません。そして、本人から見て「改善」と言えるかどうかは人それぞれかもしれません。
これを、正しいと考えるか否かで選択が変わる問題です。
あなたのロジカル思考実験の結果はいかがでしたか?