ロジカルシンキング(論理的思考)で必須の理解が求められる演繹法と帰納法。ここでは、演繹法を解説します。
演繹法とは?
演繹法とは、前提条件となる「事実」を元にして結論を導き出していく方法です。たとえば、「木になっている果実はフルーツである」という事実から、「みかんはフルーツである」という結論を導き出すのです。
演繹法は正しい前提条件を持ってくることが出来れば、正しく結論を導き出せるため、仕事の中でも使いやすい考え方です。
例えば「Aであるなら、Bである。Bであるなら、Cである。それなら、AであるならCと言えるよね」と、事実を繋いでいくことで、思考が飛んだり間違った方向に行ったりせず、頭の中が整ったまま考えていくことできます。
ただ、弱点としては、前提条件として使える事実がないと使うことはできません。正確に演繹法を展開するには「既知の普遍的な事実」があるかどうかが重要なのですが、仕事をしていく上でなかなかそんな確実な情報は得られないものです。
実際は、「なるべく確かな情報」、「信頼できる人からの情報」、「多くの意見を参考にした情報」などを前提条件として、演繹法を展開することになるでしょう。
先ほどの、「AならばB、BならばCが正しいなら、AならばCも正しい」という考え方を三段論法といい、三段論法は演繹法の代表的な考え方です。
いくつかの例を作ってみました。
演繹法(三段論法)の例題1
コタロウは犬である。
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犬は人よりも鼻がいい。
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コタロウは人よりも鼻がいい。
演繹法(三段論法)の例題2
エリカはイチゴが好き。
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「あまおう」はイチゴである。
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エリカは「あまおう」が好き。
演繹法(三段論法)の例題3
日本は島国である。
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島国は海に囲まれている。
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日本は海に囲まれている。
演繹法は難しい考え方ではない
例題を見て、それほど難しいことをしているとは思わないでしょう。演繹法は、事実を丁寧に繋いでいけばそれなりにすぐにできる…というよりいつもやっている考え方の1つです。
しかし、ちょっと間違えるとおかしなことになってしまいます。
演繹法(三段論法)のちょっとおかしな例題
トモヤはあんまんが嫌いだ
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あんまんには餡子が入っている
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トモヤは餡子が嫌いだ
一見正しそうに感じますが、トモヤは餡子ではなく、あんまんの生地が嫌なのかもしれませんし、生地と餡子が合わないと思っているのかもしれません。
頭がちょっとこんがらがってしまいそうですが、事実としてあるのは、「トモヤはあんまんが嫌い」ということだけです。ここから「トモヤは餡子が嫌い」と導き出すのは、推測にすぎず、事実とは言えません。
演繹法の落とし穴とは
演繹法を使うと、正しい結論が導き出されると思いがちです。しかし、それは前提が正しかった場合のみです。
間違った事実からは、間違った結論が導き出される点を意識しておかなければいけません。
間違った演繹法(三段論法)の例1
低カロリーなものを食べていればダイエットは成功する
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ドーナツはカロリーが低い
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ドーナツを食べていればダイエットは成功する
間違った演繹法(三段論法)の例2
日本人は皆金髪である。
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ボブは日本人である。
↓
ボブは金髪である。
演繹法に使う事実を用意するには
間違った演繹法を展開しないためにも、「なるべく正しい事実」を用意する必要があります。
普遍的な事実を元に考えていくより、「おそらく正しいはずだ」ということを前提条件にすることが多いはずです。たとえば、こんな感じにです。
確からしい事実を元にした演繹法の例題
女性は甘い物が好き
↓
甘い新商品Aを開発する
↓
女性は新商品Aが好き
↓
新商品Aが女性を中心に売れる
↓
新商品Aがヒットする
この例題は単純すぎましたが、こんなふうに「多分こう」という事実から思考を展開するでしょう。この、前提条件となる「多分こう」という事実はどうやって用意すればいいのでしょうか。
・なるべく信頼できる情報を集める
・似た商品の過去の売り上げという事実から推測する
・事例をたくさん集めて仮説を立てる
・ターゲット層の多くの人にアンケートを取ってみる
これらを担う思考法が、次にご紹介する「帰納法」です。